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【トピック】「サイド」ってなんなの!もう! 

日々サイド落ちに泣かされている全国のプレイヤーのみなさん。
はいはい。
どうもお疲れ様です。

「サイド」は、ポケカの特徴的なシステムのひとつです。
では、このサイドというシステムが、なぜこのようにデザインされているのか。
その理由について直接的に語られた資料は、僕の知る限り存在しません。
そこで、その意義や必然性を客観的な視点から見出すべく、いくつかの資料を基に考察してみたいと思います。
●ゲームシステム上のサイド
ゲームシステム上のサイドの役割は「勝利条件」、あるいはその指標です。
ゲームボーイソフト「ポケットモンスター」と設定を同じくするポケカにおいては、
ポケモンバトルの勝利条件となる最大6体の残りのポケモンが最大6枚のサイドカードで表されています。

最新の遊びかた説明書を見てみましょう。

相手のポケモンを『きぜつ』させたらとれるカードです。先に自分のサイドを6枚とったプレイヤーが勝ちです。
(2017.11.10「ポケモンカードゲーム遊び方説明書Ver.02」p.14, 株式会社クリーチャーズ)



ポケモンカードゲームルールソングにも「サイドをぜんぶとればキミの勝ち」と歌われています。



しかし、単に勝利条件の指標が必要なだけなら、
MTGのようにライフカウンターを使う等の案も考えられます。
デッキの一部を使用させることには何らかの必然性があるはず。
次!

●ゲームデザイン上のサイド ~その1「不確定性」~
ゲームデザイン上のサイドの重要な役割の1つは「不確定性」と、それによる面白さの演出だと考えます。
平たく言うなら「運要素」。
もっと平べったく言うなら「運ゲー要素」。

運要素については肯定的にも否定的にも捉えることができますが、
それも含めてゲームの面白さの一要素であることは間違いありません。
ポケカには、サイドの他にもじゃんけん、コイン、山札等いくつかの場面に運要素が盛り込まれています。

サイドには、ゲーム開始時に山札の上からランダムで選ばれた割り当てられます。
このエリアはアクセスが非常に難しく、実質的にデッキそのものを対戦毎に少しずつ違ったものにしてしまいます。
これは、デッキが60枚と決められているのと同じように、不確定性という制限による戦略要素の一種と考えてもよいと思います。

また、サイドについて語る上では山札との関係にも言及する必要があります。
ポケカをプレイしている人なら感覚的に理解しているかと思いますが、
山札とサイドはいくつかの似た性質を持っています。
ゲーム開始時にランダムで割り当てられること(サイドがランダムであるならば残りの山札もまたランダムです)。
裏側を向けられて中身がわからないようになっているうこと。
一定の条件(山札はターンの開始時、サイドは相手のポケモンを気絶させたとき)で手札に加えられること。

まず、これらの2つのエリアのカードが裏向きに配置されていることには大きな意味があります。
ポケカのお隣ジャンル、「ポケットモンスター サン・ムーン」の開発者である大森滋氏のインタビューを見てみましょう。

――社内で「これは遊びなのか」という議論が交わされるのは、なんかヤバいですね。どういうとき、そういう議論になるんですか?

大森氏:
 例えば、子供に対して「いないいない、ばあ」をやったら喜びますよね。これは、一体なんなのかということです。

――な……なるほど。

大森氏:
 一体、どこまでが「いないいない、ばあ」なのか。例えば、子供が産まれた人は観察してみるといいのですが、実は横顔で「いないいない、ばあ」をすると、ダメなんです。笑ってくれない。どうも正面から顔を向けていないと、赤ん坊は喜ばないんです。

――えー、そうなんですか!

大森氏:
 「想像したものに対して、出てきたものが一致するか」に、赤ん坊は喜びを覚えているようなんです。つまり、期待していたものが登場した喜びは、凄く根源的なものなんですね。だから、『ポケモン』でいえば、草むらから何かが出てくるとき、自分が想像したものが出てくるか否かは、人類が共通して面白いものなんですよ。

【新連載:新世代に訊く】 『ポケモン』新作は“攻略”を検索される前提? ゲームフリークの伝説を受け継ぐ若きディレクター達 【大森 滋氏・尾上 将之氏インタビュー】



これをポケカに当てはめて考えてみます。
「山札を引く」「サイドを引く」はまさに「自分が想像したものが出てくるか否か」についての営みの一種です。
つまり「いないいないばあ」と同じく根源的な面白さを演出していると言えるのです。

あるいは、「ポケモンカードゲーム」というゲームの中に「山札めくり」「サイドめくり」という2種類のミニゲームが内包されているいう捉え方もできます。
そして、エリアが山札とサイドの2か所に分かれていること、それぞれアクセスの難易度が異なること。
これによって、根源的な面白さの階層構造が生まれていると考えます。

ここまである程度納得いただけたでしょうか。
どうかな。

しかし、単にサイドをめくるだけなら、きぜつさせられた側に権利があってもいいはずです。
これは疑問に思っている人も多いはず。
次!

●ゲームデザイン上のサイド ~その2「報酬」~
ゲームデザイン上のサイドの重要な役割の1つは「報酬」の設定であると考えます。
平たく言うなら「ごほうび」。

ところで、ポケカ開発初期にメインゲームデザイナーを務めていたのは、Dr.オーヤマとして知られる大山功一氏でした。
彼の作ったボードゲーム「イチゴリラ」でも、報酬の概念が「ごほうび」という言葉で説明されています。

もし、その数字の枚数分だけ、つづけて同じ絵をめくることができたら、その絵をそろえたことになり、ごほうびとして、それらのタイルをもらえます。
(2009『イチゴリラ』丸田康司・大山功一,すごろくや)



また、この「ごほうび」ということばは、初期のポケカのイベントで配布されていた遊びかた説明資料にも使われています。

相手のポケモンを1匹、『きぜつ』させるたびに、ごほうびとして1枚めくります。
(1996『はじめてのポケモンカード』p.8 クリーチャーズ監修, ワンナップ)



あるいは、もっとメッセージ性の強い言葉も使われています。
ポケカ最初期、サイドはまだ「サイドカード」という名称で呼ばれていた当時、サイドカードがどのように説明されていたか。
一番古い遊びかた説明書を紐解いてみましょう。

20180214044823900.jpg

サイドカードはあなたの勝利のあかしであり、6匹を倒す目印にもなります。
(1996.10.20『ポケットモンスターカードゲーム遊びかた説明書』初版p.13, 株式会社クリーチャーズ)



大事なフレーズなので抜き出します。
「勝利のあかし」。

Repeat after me.
"Shouri no akashi."

そうです!
サイドは勝利のあかしなのです!
ババーーーン!

サイドは勝利のあかしとして、勝ったプレイヤーが手にするものでなければならないのです。
どういうことか、画像を使って説明します。

20180214022606692.jpg
ポケモンカードゲームルールソング

こちらはポケモンカードゲームルールソングの一場面です。
ポニータ石井氏と思しき人物がサイドを手に喜びを噛み締めています。

20180214040343947.jpg
2000.12.25「めざせ!カードマスター」p.51, 印照, 小学館

こちらは漫画「めざせ!カードマスター」の1コマです。
主人公の南井健太が最後のサイドを掲げて喜びを露わにしています。

仮に、ポケモンをきぜつさせられた側が取るようにサイドのシステムがデザインされていたならば、
サイドは「敗北のあかし」となり、
勝利したプレイヤーにできるのは単なるガッツポーズに留まり、
これらの印象的なシーンをこのように描写することはできなかったのです。

勝利の瞬間、誰しも一種の達成感を味わうはずです。
最後のサイドを取る瞬間、その達成感は身体性を伴います。
サイドは、勝利という概念に形を与え、身をもって勝利を体感させるための大事な「勝利のあかし」なのです。

相手のポケモンをきぜつさせてボードアドバンテージを得たプレイヤーが、サイドからハンドアドバンテージをも得る。
一方的であり、理不尽と言えば理不尽です。
とは言え、ポケカというゲームは構造的にドローが強力なため、サイドからの1ドローの影響は小さく抑えられてはいます。
Nやカウンターエネルギーのようなサイド参照ギミックも後発ですがリリースされています。
ただし、先攻ドロー等のように、ゲームの基本的なルールで改正された例はいくつかあります。
それでも尚、サイドのシステムは守られ続けてきました。
「勝利のあかし」として。

「サイドカード」って何なの。
「サイド」って何なの。
僕はずっとずっとずーっと疑問に思っていました。
その必然性に気付いたのは、ポケカを始めて20年以上も経った、つい最近のことだったのでした。
そんなお話。
熱くなっちゃってすみません。
[ 2018/02/14 05:05 ] トピック | trackback(0) | comment(0)

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